プロの視点「このポイントを押さえれば被害は防げた」
冷静・論理的になる(全体的)
詐欺全般に言える事は、「冷静」であったら、「もっと論理的」であったら、騙される事はなかったということです。例えば、パチンコや競馬、必勝法は誰もが憧れるかもしれませんが、よく考えればおかしい事だらけなのです。競馬は公営ギャンブルです。もしも、事前に勝ち馬がわかるとして、それが必ず当たるなら「競馬では八百長」が日常的にあるということになりますが、そんなわけは無いのです。
また、出会い系に多い寸借詐欺でも、詐欺師から「旅行に行ったら財布を落としてお金もカードも全部が無くて帰れないから、銀行口座にお金を振り込んで欲しい。」という連絡があり、指定された銀行口座にお金を振り込んだ場合、よく考えれば、「カードも無いのに、どうやってその銀行口座からお金を引き出すんだ?」という疑問が浮かびます。もしも、身分証も財布に入っていたなら、銀行で身分を証明することもできないですから、当然、お金を下ろせません。通帳と銀行印でも持っていたのでしょうか、それなら、帰りの費用程度、自分で下ろせるはずです。
詐欺ストーリーを分析する
前述の「冷静・論理的になる(全体的)」を読んで、「自分は平気だよ」と思う方は多いかもしれませんが、詐欺は全般的によく考えられたストーリーがあるのです。これを、ここでは「詐欺ストーリー」と呼びます。この詐欺ストーリーは全体的にその流れに乗ってしまうと、人の思考を混乱させていくため、どんなに冷静な人でも騙される危険があります。
その危険を回避する有効な方法は、ストーリー分解です。ストーリー分解とは、詐欺の一つ一つのストーリーのつなぎを一度分解して、一つ一つのテーマを検証していく方法です。
例えば、詐欺ストーリーには、
「1、子供が実は難病」
「2、夫がリストラ」
「3、生活苦」
「4、家賃が払えない」
「5、お金を少しだけ貸して欲しい」というように流れがあります。
はじめから苦労話をされて、同情してしまうと、冷静な判断がする事ができなくなっていきます。
まず、「1、子供が実は難病」については、「実は」という言葉がありますから、健康に見えるということになりますので、どこの病院に通っているか、難病とはどんな病気でどのような治療が必要なのかという疑問が生じます。
「2、夫がリストラ」については、調べればわかりますが、話の中では調べる事はできませんので、どこの会社でどんな風にリストラされたか詳しく聞き取ることができます。もしも、そのリストラが労働基準法を違反していたり、即時解雇のような場合は、その理不尽さはきちんとした問題として取り上げて、企業が支払うべき労働費を支払わせる事もできるわけです。
「3、生活苦」この生活苦ですが、ここは1と2を考察にいれ、そのような状況で生活レベルを落とさないことが、そもそもの生活苦の原因ではないかという疑問が生じます。また、服装や車、家の大きさなどを見れば、どの程度の生活苦なのか疑問が生じることでしょう。例えば、この話し手が女性の場合、化粧を厚くしていたり、香水をしていれば、生活苦とはなかなか言えません。なぜなら、化粧品は全て揃えればそれなりの値段はしますし、香水はぜいたく品の一種です。
「4、家賃が払えない」家賃が払えない状況は1と2と3の全ての状況が真実であれば当然ですが、もしも敷金などを入れている場合は、そうそうには追い出されることはありませんし、事情をきちんと話せば、なんとかなるものです。ですから、きちんと話し合いをしたのかどうかや家賃を支払う時期なのかということに疑問が生じます。
「5、お金を少しだけ貸して欲しい」詐欺師の目的はこのお金の無心です。もしも1,2,3,4の流れをそのまま受け入れてしまっていると、なかなか断われません。しかし、ここまでの生活苦である場合、返済の見込みはあるでしょうか、つまり、もしもあなたが金融機関の融資係だとしたら、資力がなく今後の返済の見込みの無い返済能力ゼロの人間にお金を貸すことは無いでしょう。他にもお金を貸すことはいいけど、「何に使うのか?」「いくら必要なのか?」「いつ、どのようにして返済するのか?」という疑問も生じます。「何に使うのか?」と聞いて、「家賃」と答えるなら、「それでは大家さんのところに一緒に行って支払いますよ。」と言えます。「いくら必要なのか?」と聞いて「五千円くらい」とか少額の無心であれば、その金銭で何ができるのか、何をするためのお金なのかという疑問が生じます。「いつ、どのようにして返済するのか?」ということに「夫が就職するからそのお給与から」ということなら、夫の債務でもあると考えられますから、夫になら貸してあげようという気持ちにもなります。
こうしたロジックを分析したり、分解すると、必ずその中に疑問が生じるのです。こうした疑問に明確な答えを求めると、詐欺師はその質問者をターゲットから外す傾向にあります。
もうひとつの頭脳を持つ
もうひとつの頭脳を持つと言っても、脳みそを2つにしようという事ではありません。例えば、企業なら顧問弁護士や顧問税理士といった専門家に専門的技能を頼ります。つまり、相談できる人を作っておくという事が個人の場合は重要です。
敷居が高いように思われる弁護士さんでも顧問料は安いところで月6千円(個人)という所もありますし、しっかりとした探偵社でも顧問を受けている所もあります。「そこまでしなくても!」と思うなら、「夫」や「妻」、「成人した息子や娘」「上司」「先輩」など今まで築き上げてきた人間関係を駆使する事も良いでしょう。