詐欺で訴えるために
詐欺で訴えるといっても、刑事事件としてなのか、民事訴訟であるのか、その方法は異なります。詐欺で訴える(刑事罰を目的)
刑事告訴の場合、警察が被害届けを受理してからスタートが通例です。しかし、これは、詐欺と決定付ける証拠が必要です。意外と簡単に思われがちですが、詐欺師は刑法上の詐欺罪とならないように法の網を掻い潜る対策を通常しています。そのため、刑法上の警察が取り扱える犯罪であるのか、それとも民事上のトラブルなのかが不明瞭なものが多く存在します。
まずは、事前に問題を説明できるようにまとめ、資料や証拠などを持って、最寄の警察署に相談に行きましょう。
詐欺被害立証のための証拠(刑事告訴など)
刑事告訴や被害届についての場合、民事訴訟とは異なり、多数の証拠と決定的に詐欺と言える証拠が必要になります。
刑事の場合、逮捕など国家権力として身体の自由などを奪う事も考えられますから、それ相応の証拠が必要です。もしも、何ら決定的な証拠がなくても刑法により身柄の拘束などが可能な社会であったら、不当な逮捕や告訴に怯えて暮らさなければなりません。基本的人権の観点からも一体何が詐欺罪に当たるのか、きちんと立証できなければ、刑事事件としての取扱は事実上不可能です。
契約書類などの確認
詐欺被害の多くでは、その事柄についての契約書等が多く締結されていることが確認されています。(T.I.U.総合探偵社より)また、契約書と題名はないが、事実上の内容は契約である事も多くあります。そのため、こうした契約書をよく読み、法的に適切な解釈をする事が重要です。
詐欺被害の被害届の出し方(1)
詐欺被害は、刑法246条にあるように「財物を交付」とありますから、金銭など資産価値のあるものを騙し取られたものに限られます。また、被害金が返還された場合、被害が救済されたと考えるのが妥当です。
詐欺被害の被害届の出し方(2)
詐欺罪(刑法246条)について、「いつ」「どこで」「どのような資産を」「どのように騙されたのか?」という部分を明瞭にする証拠を資料として集める事が重要です。
詐欺被害の被害届の出し方(3)
詐欺罪(刑法)か契約不履行(民法)の違いは、契約締結などの当初からその目的が騙すことであったことを、客観的に立証する証拠が必要です。例えば、投資名目で金銭を集めた詐欺師が全く投資先がないという状態は、わかりやすい詐欺であると考えられます。
詐欺被害の被害届の出し方(4)
被害届(警察)に出す場合は、下記のような法令が参考になります。
犯罪捜査規範第61条(被害届の受理)
①警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
②前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第6号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。
犯罪捜査規範第62条(犯罪事件受理簿)
犯罪事件を受理したときは、警察庁長官(以下「長官」という。)が定める様式の犯罪事件受理簿に登載しなければならない。
つまり、警察官の裁量で被害届を受理しない、もしくは被害届を作成しないということは、法令を違反していると考えられますが、内心の立証ができていない場合や明確な資料がない場合などで、一般に民事であると考えられる場合、刑事上の被害とは言えません。また、被害届は意思表示の一つであると考えられますから、被害届を受理したからといって犯罪捜査が開始されるとは限りません。
刑事と民事の違い
刑事と民事は全く異なりますので、簡単明瞭に説明します。訴える人が違う
刑事告訴などの場合、加害者を訴えるのは被害者ではなく検事さんということになります。その流れは、「警察が捜査を行い、その結果を書類送検し、担当の検察官(検事)が起訴するか不起訴とするか決め、不起訴の場合はお咎めなし、起訴の場合は裁判で求刑し、その裁判によって刑が確定したり、無罪となる。」という流れです。
民事訴訟の場合、詐欺であれば契約の取消や不法行為による賠償などが主に争われます。この場合、訴える当事者は被害者です。また、複雑な法律事務は一般的に弁護士に依頼する事になり、訴訟代理を頼む事が一般的です。民事訴訟の場合は、罪の確定ではなく、金銭の返還を目的とします。
刑事民事で違う判決もある
刑事事件と民事事件を一般的に同じであるという見方がありますが、全く異なります。そのため、刑事事件としては無罪となったが、民事訴訟では賠償金の判決が出たということは、あり得ます。同一である考えるのは誤っていますので、別のものとして考えるのが妥当です。
刑事事件では金銭返還は無し
刑事事件では罪についての問題ですから、金銭の返還を司法機関がサポートすることはありません。騙し取られた金銭の返還などを求める場合は、民事訴訟によって争われます。また、提訴する裁判所も被害金額で分かれ、140万円以下なら簡易裁判所・それ以上の金額なら地方裁判所からのスタートとなります。
詐欺による取消
詐欺によって結ばれた契約は取り消すことでがきます。(民法96条)民法96条「詐欺または強迫」
1、詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2、相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消す事ができる。
3、第二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗する事ができない。
取消しの効果
基本的に「取消し」とは、民法121条で確認できます。
民法121条
「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし・・・。」
つまり、初めからなかった事になりますから、例えば騙し取られた金銭などがあれば、その金銭を返せ!と言える事になるわけです。
善意と悪意
法律用語での「善意」とは、何も知らなかった事です。また、「悪意」とは、すでに知っていた事となります。一般用語と異なるので、注意してください。例えば、AさんがBさんを騙して家屋などを巻き上げたとします。その後、AさんがCさんに転売してしまった場合、法律では誰を保護すべきかが問題となります。この場合、CさんがAさんの騙し取った行為を知っていたのに買った場合は「悪意」、何も知らずに買ってしまった場合は「善意」となります。Cさんが「善意」となれば、保護されるのはCさんとなり、「悪意」となれば、保護されるのはAさんとなります。
ちなみに「第三者」とは当事者以外の事で、第四者・第五者とはなりませんので、注意してください。
民事手続で取り返す方法論
合法的に詐欺による被害金を訴えて取り返す方法はいくつかあります。簡易裁判所での手続
1、支払督促
金額などに関係なく、裁判所から支払うように催促してもらう方法です。
2、少額訴訟
60万円以下の債権についての訴訟です。
3、通常裁判
140万円以下の債権についての訴訟です。
4、民事調停
平たく考えれば、裁判所による話し合いです。調停の場合は、調停委員が当事者の間を取り持つことになります。少額訴訟や通常裁判(民事訴訟)のように、請求額の上限は特にありません。